降りてすぐケータイを忘れたことに気づいたけれど、
電車は行ってしまった。
主人をなくした無音のワイヤレスイヤホンが
耳にむなしい。
しかし、ここは終着駅のひとつ前の駅。
さっきの電車はまだ終着駅にいるかもしれない。
とりもどすチャンスはある。
さっそく終着駅ゆきの電車に飛び乗ると、
電車が向こうからやってくる。
あの色。さっきまで乗っていたのと同じ。
もう折り返してきたか。
そうじゃありませんように。
そうして、その電車とすれちがうとき、
主人をなくしたイヤホンがとつぜん
「コネクティッド」としゃべった。
あっちの電車に置きっぱなしの
私のケータイとつながったのだ。
ああ、私のケータイはあの電車のなかにいる。
そしてすれちがう電車は互いに遠ざかっていく。
一瞬の「コネクティッド」。永遠の別れ。
突然、頭のなかで小田和正の「ラブ・ストーリーは突然に」が
流れ出した。
そんな場合じゃないのに。
……結局、ケータイは取り戻せた。
駅員さんに聞いたところ、
永遠の別れかとおもったその電車は
なんでも2駅くらい先までいって
すぐこの終着駅に戻ってくるという
奇跡的にありがたい電車だったのだ。
私のケータイを載せた電車はもどってきた。
イヤホンは改めて主人とコネクティッドした。

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