消える山

風邪をひかないと信じている。

そこで思い出すのは「コブラ」という漫画。

主人公は左手にサイコガンを持つ海賊コブラ。

今回のターゲットは、とある山の頂のお宝。
他の海賊たちと競いながら一番乗りを狙う。

ところが、この山はふしぎな性質をもっていて、
山頂に宝があることを少しでも信じられないと
そのとたん山は姿を消し、その者は落下する。
奈落の底へ、あーっと落ちてゆく。

まわりに風邪が多くなると、
じぶんもあぶないかもとちらりと思う。
すると、コブラのあの消える山のことが思い出され、
あーっと叫んで落ちてゆく海賊たちの姿が浮かぶ。

そこでただちに自分は風邪を引かないのだと
信じ、念じ、消えかかった山をとりもどす。
あぶない、あぶない。

コブラを思い出して踏みとどまるのは
風邪シーズンにかぎらない。

例えば毎朝、俳句を書き写す。
去年までは波多野爽波。今は宇佐美魚目。

忙しい朝、しごとが気になる朝もあって、
そういうときにふと
これってほんとに役に立つんかなという迷いが
頭をかすめる。

迷うと同時に海賊たちのあーっが浮かび、
役に立つかどうかじゃない、
やるかやらないかだけだと立て直す。
あぶない、あぶない。

なにしろ迷いの多い毎日なので、
そうやって年に何十回もコブラを思い出している。




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